長野の磐座


雨境峠の鳴石あまさかいとうげのなるいし
長野県北佐久郡立科町雨境


■旅の安全を祈った手向の磐座

鳴石の大きさは、上部が径2.5メートル、下 部が径3.3メートルだという。「重ね餅状の巨 石」とあるが、ハンバーガーのようにも見える。 じつにユーモラスな形状で、訪れる人をホッとさ せる空気が流れている。心が癒される造形だ。
 自然の造形と思っていたが、立科町教育委員会 の『雨境峠』によると、「上下に重なるふたつの 石は、外形や溶岩組織のちがいから見て別の石で あり、巨石を運んで人為的に重ねたもので、ふた つの石を選んでこの地に運び、祭祀の場を構築し た」とある。鳴石とよばれる「わけ」は、石と石 のあいだに隙間があり、こぶし大の石でたたくと、 余韻のある音がするからだという。周囲には、方 形に区画された集石遺構があり、祭祀場所として の磐境が築かれているという。
(『磐座百選』より一部抜粋)





諏訪大社本宮摂社・磯並社すわたいしゃほんみやせっしゃ・いそなみしゃ
長野県茅野市宮川高部



■古代諏訪湖の水位を今に伝えるという小袋石

中沢新一氏は『精霊の王』で、縄文文化にまで 根をおろした土着的神=精霊のかたち・「古層の神」と 表現し、シャグジ(宿神)と解している。 興味深いことは、ミシャグチの神体は、男根状の 石棒であり、女性を象徴する石皿であり、かつ幼 児や胎児を意味する丸石だというものだ。とくに 「男根状の石棒と胞衣を彷彿させる胎生学的イメ ージ。このふたつの結合が、ミシャグチという概 念をかたちづくっている」という生命の神秘にふ れるような解釈は印象に残る。今回は、ミシャグ チ神の本貫をたどる旅となる。
(『磐座百選』より一部抜粋)




阿智神社あちじんじゃ
長野県下伊那郡阿智村智里奥宮山497


■最初に祭神が降臨した磐座を祀る奥宮

 阿智神社は前宮と奥宮からなり、前宮は昼神温 泉郷の中心部にあり、奥宮は前宮から阿智川を2 キロほどさかのぼった本谷川と黒川の合流点に鎮 座する。古くは、阿智川に沿って東山道が通り、 阿知駅がおかれていた。美濃国との国境に位置し、 北西には、最大の難所とされる神坂峠がひかえて いる。全国の駅路のなかで最高地点を有する峠で、 峠を越えると美濃国の坂本駅にいたる。最高地点 ということもさることながら、阿知駅と坂本駅の 距離がもっとも長いことでもしられる。阿知駅か ら神坂峠を越えて坂本駅まで38キロだという。
(『磐座百選』より一部抜粋)




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